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2009年02月 アーカイブ

2009年02月14日

赫炎のインガノック

 『赫炎のインガノック - what a beautiful people -』はライアーソフトが過去に発表した蒼天のセレナリアを初めとする複数の作品と世界観を共有する物語群の一つである。
 超高度に発達した蒸気文明はスチームパンク作品群に題材を求め、地名や一部の登場人物にはクトゥルフ神話の影響が見られる。また、作中には魔術や聖書に由来する用語・設定が随所に散りばめられ、シナリオライター桜井光のジュブナイル的な基本精神と共に、壮大にして謎多き作品世界を引き締める柱となっている。
カツサン オーダー メルトン キートーン 市田柿 オーララ ミルク 総合山風 スズラン レングス もくず フリル ジスト カッター チュニジ 紅の空 ピンプリ 凪笛 蜃気楼 除の鐘 パトロール オーバー リンター ダイア ヒプノ フィート ズーム ミニコミ 総合大河 マシン トッシュ テトラード フラワー シーエス ラカイト フシグロ トラッ オパール ネービー リスク ザーボード ボエポン ダイジ マター スケール セクト アスン アサイン チューン アース

 今作はその内の『既知世界』と呼ばれる世界に存在する二大国の一方である、『王侯連合』の一都市『インガノック』を舞台とする。突如都市を襲った《復活》と呼ばれる原因不明の災厄。不可解にして過酷な状況の中でたくましくも生き続ける人々の在り方と、人間の純粋な想いが生み出してしまった悲劇。そして《美しいもの》と呼ばれる変わらない“何か”を、主人公である青年医師ギーを基点とする12の章を通して描いた同社の意欲作。
 10年前。《復活》と呼ばれる原因不明の災厄により、全てが捻じ曲げられ、異形と化した都市『インガノック』。かつてこの世の理想郷たる完全環境都市(アーコロジー)を目指したそこは、今では外界と隔絶され、都市存続を唯一至上の目的とする非情な法律と、現出したお伽噺の住人、神話の怪物達が跋扈し、奇病業病が蔓延する地獄の様相を呈していた。
 そんな中。人々に変人と罵られながらも、弱者撲滅を謳う都市法に抗い、手を差し伸べ続ける巡回医師ギー。彼は《復活》後の都市で独自に生み出された魔法にも似た超技術『現象数式(クラック)』を操る、『違法数式医(イリーガル=クラッキング・ドク)』だった。
 溢れる“死”に感情を凍てつかせ、己の身を省みず手を差し伸べても、零れ落ちていく命達。もはや使命感か義務感か、己を衝き動かすものの正体さえ掴み切れはしない。そしてまた、ギーも自身に芽生え始めた狂気を自覚していた。
『こんにちは。ギー』
 今日も幻の道化師は囁く。ギーの視界の端で踊り続ける、この十年で芽生えた狂気。
 ……しかし。その日は何かが違っていた。
『こんにちは。ギー。雑踏をよく見てご覧』
 狂気が造り出した幻に過ぎない筈の、道化師の導き。ギーは自嘲しながらも、気付けば声に従っていた。

――そしてギーは出会ったのだ。彼の、そして都市の命運をも左右する二人に。
 一人は少女。この異形都市に在りながら穢れを知らず、人が忘れた“笑顔”を絶やさぬ不思議な少女。
 一人は影の巨人。お伽噺の住人にして、都市に残された最後の希望と謳われる“鋼の人形”。

ギーが得たものとは一体? 《奇械》とは何か? 都市が忘れていた真実とは? 
 閉ざされていた物語は、少しずつ動き始める……。

異形都市(閉鎖都市)インガノック。
 湖上を埋め立てた人口土壌の上に建設された、積層型巨大構造体から成る『王侯連合』の大型機関都市。
 かつて完全環境型都市(アーコロジー)を目指したそこは、《復活》後十年を経た今ではこの世の地獄と化している。《復活》と同時に発生した《無限霧》によって外界とは完全に隔絶され、王侯連合は既にインガノックを「連合に所属しない廃墟」として定めたという。
 都市の頭頂部(全体の2%)には支配者層である上層貴族が住まう区画があり、100万に及ぶ市民が住まう残りの98%は全て下層とされる。下層は13の層プレートによって構成され、各プレートは大階段及びモノレールによって繋がれている。上層に近いプレートほど市民等級の高い裕福な市民が多く居住し、層を下るに従って生活水準は悪化していき、最下層では餓死者が出ることすら珍しくは無い。
 主人公であるギーが居住し、物語の基点となるのは第7層の第28区画にあるアパルトメントの2号室。

主要登場人物
ギー (声:竹田彬夫)
 主人公。異形化した都市で弱者に手を差し伸べ続ける巡回医。キーアとの出会いをきっかけとして、都市に残された最後の希望であり、最強の力でもある《奇械》ポルシオンの宿主として選ばれる。都市の全ての人間と同様に、《復活》前後の記憶を失っている。致命的なほどのお節介焼きであり、誰もが諦める状況でも決して患者を見捨てることはない。しかし脳変異により、食欲を感じないなどの神経構造の障害を抱えており、自身は不養生になりがちで周囲が常に心配するほど。一方この変異によって現象数式を使うことができ、医療用のものを習得して実用している。
キーア (声:かわしまりの)
 物語の鍵を握る少女。攻略対象ではない。ギーのすぐ近くに寄り添い、彼の生きる姿を見つめ続ける。直感的に人の嘘を看破し、その瞳は《美しいもの》さえ見通す。その出自や過去はプロの情報屋にも掴めず、自らも一切語ろうとはしない。ギーのアパルトメントで預かる為の名目として、“あくまでも一時的に”彼の養女となった。アティをギーの『奥さん』と呼び、そのたびにアティは照れまくり、ギーは淡々と「奥さんではない」と訂正している。混沌たる都市下層にあって、誰へも笑顔を向けることができる希有な人間である。
アティ (声:野月まひる)
 本作のヒロイン。《忌罹病》により猫や虎に似た幻想の異人種《猫虎》に変異した為に、上層を追われた過去を持つ。右眼に発現した黄金瞳の効果によって、その身は成長も老化もしなくなった。生きる為に様々な数秘機関を肉体に埋め込み、荒事に身を置く。明るさに満ちた、蓮っ葉で皮肉屋な娘。肉体はしなやかで俊敏に、爪は鋭く、精神はたくましく。でも、本当は──
ケルカン (声:越雪光)
 自らを巡回殺人者と任じる、特1級指名手配犯。『死』こそがインガノックにおける救いであると嘯き、その鎌を振るう死神。《奇械》クセルクセスを自在に操り、ことごとく対極を行くギーの前に立ち塞がる。
ルアハ (声:青山ゆかり)
 糸を失った主無き自動人形と人々から呼ばれる、鋼鉄の娘。全身を改造された機関人間。キーアとの出会いにより自我を取り戻すきっかけを得るが、その無垢なる精神はより強い感情へと次第に引き寄せられていく。
老師イル (声:なし)
 影の猫。傍観者にして、ありとあらゆるものを観測し得ると言われる幻想の異人種《観人》の老人。大きな肉球と静かな瞳、ユーモラスにして捉えどころの無い言動が印象的な人物。その知識と人格により、下層の人々から「老師」と呼ばれ慕われている。
グリム=グリム (声:真田雪人)
 ギーの視界に度々現われる、仮面の道化師の幻。時折、現実の視界や夢の視界の片隅に現れては、ギーに謎かけの言葉を放つ。
大公爵アステア (声:滝沢アツヤ)
 偉大なる碩学にして魔術師。《復活》によって壊滅寸前にまで陥った都市を復興させる原動力となった、現象数式の発見者でもあるインガノックの支配者。その一方で、都市存続の障害となる弱者の撲滅を謳う『死の都市法』を制定するなど、二面性を併せ持つ。現在は何らかの理由によって身を隠している。
レムル・レムル (声:理多)
 原初にして最強の《奇械》所有者。最も《美しいもの》に近く、そして同時に限りなく遠くに在る少年。その精神は恐怖と狂気と歓喜と至福に満ちている。大公爵アステアが3年をかけて建造した都市上層の特1級封鎖建築の最奥に閉じこめられており、生命活動以外のあらゆる活動を封じられている。一部の上層貴族からは、彼こそが都市インガノックの《復活》の理由そのものであると噂されている。

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